小説 - 桃尻文庫

二組の廊下

教室を出ると、お馴染みの光景があった。隣のクラスの壁際に赤く染まったお尻が三つ。全員、下着は足首まで下げられていて、両手は膝できっちり揃えられている。二組の名物、お尻ペンペンのお仕置きだ。そういえば、授業の間にパチンパチンと音が聞こえていたっけ。

二組はちょうど手洗い場の前だから、休み時間は他のクラスの生徒たちも集まってごった返す。そんな中で男も女も関係なくこの反省のポーズを取らされるのは、さぞかし恥ずかしいことだろう。

「今までの先生の中で、断トツ厳しいよ」

前に二組にいる幼馴染から聞いた話では、鉄は熱いうちに打てという方針なんだそうだ。宿題や係の仕事をサボっても、喧嘩や忘れ物をしても、とにかくお尻ペンペンで泣かされる。進級するほど取り返しがつかなくなるからと、特に授業態度にはうるさいらしい。

「ま、上手くやるしかないよねぇ」

そう言って苦笑いしていた幼馴染も今月に入って、すでに何度かお尻を晒す羽目になっていた。まあ、同情しつつも余所者の私たちからすれば、目を逸らしてトイレを使うほかないのだが……。

それから少し前になるけど、こうしてお尻を出して並んでいる子たちを見て――

「カンチョー!」

――なんて、例のおふざけをやらかした子もいた。

たしか四組の子だったと思う。案の定というか、そりゃそうだろうというか、その場で二組の先生からビシバシとお尻を叩かれ、同じように横に並ぶ結果になっていた。ほんとに突っ込んだわけじゃないとか、あわてて言い訳をしていたけど、態度自体が問題なのだから通るわけもない。

「お尻出しなさい!」

先生の一喝が廊下に響いたあの日。初めて生でお尻ペンペンを見て、私を含めて水場を利用していた子たちが、ほぼ全員固まってしまったのを覚えている。なんせ背の高い先生が、手形が残るくらい振りかぶって叩き始めたのだから。粗相した子がワンワン泣いても弱めることなく、きっちり十発叩かれたお尻は風呂上がりみたいに真っ赤になっていた。

「しばらくここで反省していなさい」

そう言って同じように立たせる先生。涙を拭いつつ膝に手をついた子に、返事をしなさいとさらに追い打ち。不意の十一発目にしゃくりあげながらハイ!と叫んだあの子の、鼻水を垂らした顔が強く印象に残っている。

「きみ、水がもったいないよ」

その時、突然のお仕置きに唖然として水を出しっぱなしにしていた私も注意され、同じようにかん高くハイ!と叫んで、あわてて蛇口を閉めたっけ。まだちょっと、手に泡が残ってたのにね。

診断メーカーお題 彼の「ごめん」は軽すぎる



彼の「ごめん」は軽すぎる。
はにかみながらそう言う度に、俺は何でも許してきた。
仕方ない、悪気があったわけじゃないんだからって。
でも、今日の失敗はまずかった。

玄関を飛び出した彼の前を、ワゴン車が通り過ぎていった。
ぶつかる寸前、仰け反るように後ろに倒れ込んでギリギリセーフ。
いつも気をつけろって言ってるのに。
血の気の失せた俺に、彼は振り返っていつもの「ごめん」。
ダメだ、今のはダメなんだ。

思わず彼を抱きしめて、そのまま力任せに尻を叩く。
手の平がジンジンと疼きだす頃、いつもの「ごめん」は「ごめんなさい」に変わった。
痛かったね、でも。
もう会えないかもしれないと思った。


改行を除いて280字。軽めのお題でお茶を濁す試み。

おねしょの朝

こんなモノがあったので、


ちょっとやってみたのでした。


あの日もこんなふうだった。バカみたいに青い空、日差しを受けた肌がジリジリする夏の朝。隅にカラの植木鉢が投げ出されたままのベランダの庇では、短冊の傷んだ風鈴がさっそく風に吹かれて鳴っている。

絵面だけなら涼しげだろう。でも、その時の私は、寝巻き代わりのタンクトップを汗でじっとりと湿らせていた。部屋から漏れ聞こえる、夏らしい一日になるという朝の情報番組の声の通り、すでに外はムワッとした熱気が立ち込めているのである。

登校時間には間があるせいか、柵から通りを見下ろしても人影はまばらだ。朝の早いスーツ姿の大人たちや掃き掃除に出たお年寄りが、軽く会釈しながらすれ違っていくのが、まだポツポツと見えるだけ。

不意に掃き掃除をしていた老人が腰を反らし、空見上げて視線を巡らせる。良い天気だなんて思っていたのだろうけれど、その仕草に気づいた私は、こっちを見るなと願いながら、慌てて湿った布団の影に身を隠した。そう、今朝は、おねしょ、したのである。

我が家では、おねしょをするとお仕置きがあった。今ほど夜尿症が深刻に捉えられていないかわりに、それに対する扱いもまた、ぞんざいなものだった。子供は漏らして当たり前。そのかわり、叱ることも当たり前。

今のように大騒ぎして病院を連れ回され、知らない人にプライベートを探られるのと、さて、どっちがマシかはわからないが、今になって思い出すのは、こうして閉め出された朝の景色と、あと一つ。その後のお尻ペンペンの気の重さだった。

「入ってお尻向けなさい。まったく、小さい子みたいにお布団濡らして」

しばらくしゃがんでいると、いずれカラカラとガラス戸が開く。そそくさと引っ張り込まれた私は、今度は部屋の真ん中で四つん這いになり、お○っこくさいお尻を母に赤くされるのである。

パチン、パチン、パチン……。

ここまで素直に出来ていれば、というか、忙しい朝に余計な手を煩わせなければ、そんなに強くは叩かれなかった。さすがに何度打たれたかまでは覚えてないけれど、平手がお尻に落ちる度ごとのピリッとした独特の刺激と圧迫感はまだ思い出せる。

パチン、パチン、パチン……。

少しずつ叩く位置を変えながら、満遍なく叩かれる。本気で打たれているわけではないとはいえ、回数が増えれば痛みも増してくるし、なにより大好きな母に(今は照れくさいが)手を上げられているという心細さが、幼心を揺さぶって、じんわりと涙を誘ったのだ。

パチン、パチン、パチン……。

おおよそ一、二秒に一回のペース。時間にすれば僅か五分も立たないうちに、私はごめんなさいと嗚咽を上げた。こうなると話は早く、母の「反省したね」の声と同時にお風呂場まで引っ張られ、出しっぱなしのお尻をシャワーで流されると、そのまま涙も止まらないうちに制服を着せられた。

「さ、早く食べちゃって」

テーブルに着くと、お締め出しの間に焼かれたトーストと昨夜の残り物が用意されていて、眼の前でオレンジジュースが注がれる。焼き立てのパンの香りを楽しむ余裕なんて無く、私はまずそれを一気に飲み干してから、涙の味の残ったトーストを齧るのだった。

……

それから時は経って、今度は私がトーストを焼いている。私の頃と同じように、シーツと一緒に軽い水洗いを済ませたパンツは、すでに洗濯機の中でくるくると回っていた。

「ねー、ちょっとは悪いと思ってたりする?」
「んー……」

朝の子供向け番組を見ている我が子に問うてみると、なんとも眠そうな生返事が返ってきた。いっぺん、お仕置きでもしてやろうかと思いつつ、まあ、今時そりゃないかと、ジャムの封を切る。

なんてったって出るものは出るし、たかだか数年直るのが遅かったところで、大人になれば大差のない時差だ。本人が悩む歳になったら診てもらうのもいいかもだけれど、それまでは、親の務めとでも思っておこう。

「寝る前にトイレ行きなよー?」
「んー……」

湿った布団を抱えてベランダに出ると、タイミングよく風鈴がチリンと鳴った。ああ、今日も空が青い。


以上、改行点丸含めると1680字ぴったりなはず。伏せ字はブログのNGワードに引っ掛かるため。もうfc2ブログは諦めたほうがいいかもなぁと、ふと思った。

お仕置きのある世界03 町中のお尻出し(母/娘)

この世界では時折、外でお尻を出している子がいる。

もちろん車の来ない脇道や広場などに限られるが、しっかりと下着を下ろし、ある子は膝に手をつき、ある子は足首を掴み、小さなお尻を突き出している。そして、その傍らには保護者が付きそい、じっと見守っているのである。

察しの良い人はお解りになるだろう、これはどこでもすぐにお尻を出せるようにするための訓練なのだ。私も最初に目にした時は面食らったが、この世界では、お仕置きをスムーズに執行することが、それだけ重要視されているようなのである。

だから幼稚園で、学校で、こうして家族と出かけている時であっても、幼い頃から従順にお仕置きを受けられるように訓練を欠かさない、というわけだ。

実は私もこの異世界に来たばかりの頃、――いや、来たという表現は、もしかしたら正しくないかもしれない、ともかくある日を境にして、日常に急にお仕置きがあふれかえったばかりの頃に――母親から毎日のようにやらされたのだ。

「……お尻!」

ある日のお仕置きの時、素直にお尻を出せなかったのが、きっかけとなった。

所構わず、何の前触れもなく発せられる、お尻という言葉。最初はわけもわからず戸惑うばかりだったが、それが許されるような世界でないことは、これまでに語ってきた通りである。

どうやらこの世界では、お仕置きを言い渡された時にすぐお尻を出せないのは、非常に恥ずかしく、あってはいけない事らしかった。

「まさかこの歳になって、またお尻の出し方から教えなきゃならなくなるなんてね」

自分の置かれた状況も分からない私。戸惑いに満ちた振る舞いは反抗的と捉えられ、たっぷりとお仕置きを追加された後、明日からお尻の訓練をしてあげます、と告げられたのだった。

……

「お尻!」

(なんでお尻? なんでこんなところで!?)

やにわに前を歩く母が振り返り、叱る時の特有の視線と声の調子でこう言われた時は、信じられない思いだった。

夕飯の買い物について行った時のことだ。理由もわからず、急に母にお尻と言われ戸惑っていたら、有無を言わさず下着を引きずり降ろされたのだ。

「塀に手をつきなさい!」

そして、その歳で恥ずかしい、素直じゃない子はどうなるかたっぷり教えてあげます、なんて決まり文句と共に、剥き出しのお尻に手の平が次々に降ってきたのである。

ピシャリ、ピシャリ、鮮烈な痛みの中、手をついたブロック塀のザラザラした感触と、周囲の家々に反響した平手打ちの音が驚くほど大きかったのをよく覚えている。

「お姉ちゃんなのに、まだ自分でお尻出せないんだ」

通りかかった親子連れにクスクス笑われたのは、二回目の時だ。ある時などは駅前の広場やスーパーマーケットの前で言われ、どうしても下着を下ろせずにお仕置きを貰った事もあった。

「お仕置きの作法も守れない子は、みんなに真っ赤なお尻を見てもらいなさい!」

人通りの激しい広場では、そんな母の言葉と同時に周りの視線が集まった。あるいは咎めるように、あるいは窘めるように、道行く大人達は振る舞うのである。

しばらくの間、私は大勢の人に見られながら、普段から薄っすら赤いお尻を、さらに赤くされ続けていた。

……

お尻、お尻、お尻。今日もまた、お尻。

だが、そんな訓練が幾日か続いた日、私はついに気がついたのだ。自分からすぐにお尻を出した時には、誰もが私を目にも留めずに素通りしていく事実に。

(……そうか! こっちが"あたりまえ"だったんだ!)

そう、"お尻を出すのは恥ずかしい"という私の中の常識と、"お尻を出せないのは恥ずかしい"というこの世界の常識の逆転に、やっと気がついたのである。

……

「お尻!」

お仕置きを受ける度に、そんな訓練や気付きが繰り返され、今では私もこうしてお尻と言われれば、どこでもすぐに下着を下ろして、お尻叩きのポーズを取ることができるようにまでなってしまった。

理由を聞く前に、あるいは恥ずかしさや恐怖を感じる前に、まずはお尻を出せるようにする。どうやら、これが一番肝心な事であるらしかったのである。

私は学んだ。お仕置きに対する疑問や不安は、素直にお尻を向けて大人を納得させてから、聞くなり考えるなりすればいいのだ。多少、理不尽であっても、結果的にそれがお尻の被害を減らす事に繋がるのだ、と。

「よくできました。お尻しまっていいわよ」

スーパーマーケットの棚の間。足首まで下着を下ろし、ピンと伸ばした膝に両手を添えた姿を見て納得した母は、ワシワシと私の頭を撫でると、そう言ってお菓子を一つ買い与えてくれたのだった。


おしまい

初めての罰ゲーム

午後三時半、ランドセルがいくつも転がる放課後のとある家。薄型テレビからは時代遅れな電子音が流れ、道着をまとった格闘家が、どういうわけだか手の平からエネルギーを飛ばしあっていた。共働きの親が留守の時間帯、ここはちょっとした溜まり場になっているのだ。

『YOU WIN』

古い対戦型の格闘ゲーム。画面に派手なフォントが表示され、2P側のチャイナドレスの女が甲高い悲鳴と共に倒れ伏すと、道着の男の勝ちポーズに合わせるように部屋が沸いた。

「勝負あり!」
「尻だせ、尻!」

負けたのはリク、この罰ゲームを提案した本人だった。三回負けたらおもちゃのバットで、お尻を叩かれること。世代から少し離れた古いソフトを楽しむには、少しばかりのスパイスが必要だったから、みんなも同意した。

一つ誤算だったのは、誰かが負ける度にエスカレートしていったことだった。最初、軽く当てるだけだったスイングは次第に振り幅が大きくなり、腰が引けていると、もっとしっかり突き出させるようになった。

「痛っ!」

パコッ!と小気味よい音を立て、プラスチックのバットがズボンのお尻にヒットする。応援用の軽いものだから大して痛みはないが、それでもズボンの上からお尻を擦って痛がってみせる。こうして誰かが負ける度にさっと尻を向け、勝った方がスイングする。

そんな罰ゲームが一巡すると、みんなはさらなる刺激を求めはじめたのである。

「今度から負けたヤツ、パンツ下ろして生ケツな」

勝ち越したカイが告げると、他の数人もいいねーと歓声をあげた。こんな時、誰も自分が負けた時のことを顧みないのが、この年頃の熱しやすさであった。場の盛り上がりが、なによりも強かったりするのである。

『YOU WIN』

ややあって画面の中では、今度は道着の男が倒れ伏していた。不意の負けに、それまで順調に勝ち越していたカイは狼狽えた。まさか、言ったそばから自分が負けることになるなんて!

「今度は生ケツって言ったよね」

コントローラーを握ったまま、おずおずとするカイにすかさず野次が飛ぶ。さすがにアレは冗談だった、なんて言う隙も与えまいとして、狭い室内では尻コールが沸き起こる。カイにしてみれば、このコールをする側にいるはずだった。それを見越して連勝中の相手に、誰も反対しないタイミングで切り出したのである。

「えー、マジで……?」

半笑いで及び腰のカイに、連敗を喫していたリクは実力行使に出た。

「よいではないかー♪」

バラエティだか時代劇だか、はたまたよろしくない動画サイトでも見たのだろうか。楽しげなセリフを口にしながら、勢いのまま脱がせに掛かる。組んず解れつ、カイを器用に抑え込んでいく。カイも身を捩ってせめてもの抵抗を見せるが、やはり言い出しっぺである負い目のためか、力任せに跳ね除けることもできず……。

ズルリ。

馬乗りにされ、見事にお尻を剥き出されたのであった。

『おぉー!!』

お尻が顕になると同時に、その場にいた数人から歓声が上がる。ずり下ろされた白いパンツが股の間で三角形を作ると、カイは早くも恥ずかしさに涙目になっていた。全部、見られてしまった……。

『ペンペン♪ペンペン♪』

次いでペンペンコールが起こり、勝者のバットがリクに手渡される。リクはバットを高く掲げると、しなやかに手首を返してカイのお尻に打ち下ろし――

パチーンッ!

――ズボン越しとは違う、弾けるようなお尻の音が室内に響き渡ったのであった。


2018-06-17 罰ゲーム応援バット 


パチーンッ!……パチーンッ!……パチーンッ!!

その日、それからも数回お尻の音と歓声が繰り返され、罰ゲームが一巡する頃には彼らの間に不思議な連帯感のようなものが生まれていた。銭湯に行った時など隠しもしないし、プールの着替えの時にちらりと見えてしまう時は、なんてことはないはずなのに。

部屋でお尻を出す独特の感覚。集まるみんなの視線、ヒリヒリとした軽い痛み。まだ性欲もその発散も理解してしない彼らの胸中には、恥とも屈辱とも興奮とも言えない、妙な高揚と新しい種類の興奮が燻り始めていた。

そして、彼らは集まる度に誰からともなく、こう切り出すようになったという。

「ねぇ、今日はやるの……罰ゲーム?」



おしまい


※…お仕置きとは少し毛色の違ったものを書いてみました。