2018年06月 - 桃尻文庫

初めての罰ゲーム

午後三時半、ランドセルがいくつも転がる放課後のとある家。薄型テレビからは時代遅れな電子音が流れ、道着をまとった格闘家が、どういうわけだか手の平からエネルギーを飛ばしあっていた。共働きの親が留守の時間帯、ここはちょっとした溜まり場になっているのだ。

『YOU WIN』

古い対戦型の格闘ゲーム。画面に派手なフォントが表示され、2P側のチャイナドレスの女が甲高い悲鳴と共に倒れ伏すと、道着の男の勝ちポーズに合わせるように部屋が沸いた。

「勝負あり!」
「尻だせ、尻!」

負けたのはリク、この罰ゲームを提案した本人だった。三回負けたらおもちゃのバットで、お尻を叩かれること。世代から少し離れた古いソフトを楽しむには、少しばかりのスパイスが必要だったから、みんなも同意した。

一つ誤算だったのは、誰かが負ける度にエスカレートしていったことだった。最初、軽く当てるだけだったスイングは次第に振り幅が大きくなり、腰が引けていると、もっとしっかり突き出させるようになった。

「痛っ!」

パコッ!と小気味よい音を立て、プラスチックのバットがズボンのお尻にヒットする。応援用の軽いものだから大して痛みはないが、それでもズボンの上からお尻を擦って痛がってみせる。こうして誰かが負ける度にさっと尻を向け、勝った方がスイングする。

そんな罰ゲームが一巡すると、みんなはさらなる刺激を求めはじめたのである。

「今度から負けたヤツ、パンツ下ろして生ケツな」

勝ち越したカイが告げると、他の数人もいいねーと歓声をあげた。こんな時、誰も自分が負けた時のことを顧みないのが、この年頃の熱しやすさであった。場の盛り上がりが、なによりも強かったりするのである。

『YOU WIN』

ややあって画面の中では、今度は道着の男が倒れ伏していた。不意の負けに、それまで順調に勝ち越していたカイは狼狽えた。まさか、言ったそばから自分が負けることになるなんて!

「今度は生ケツって言ったよね」

コントローラーを握ったまま、おずおずとするカイにすかさず野次が飛ぶ。さすがにアレは冗談だった、なんて言う隙も与えまいとして、狭い室内では尻コールが沸き起こる。カイにしてみれば、このコールをする側にいるはずだった。それを見越して連勝中の相手に、誰も反対しないタイミングで切り出したのである。

「えー、マジで……?」

半笑いで及び腰のカイに、連敗を喫していたリクは実力行使に出た。

「よいではないかー♪」

バラエティだか時代劇だか、はたまたよろしくない動画サイトでも見たのだろうか。楽しげなセリフを口にしながら、勢いのまま脱がせに掛かる。組んず解れつ、カイを器用に抑え込んでいく。カイも身を捩ってせめてもの抵抗を見せるが、やはり言い出しっぺである負い目のためか、力任せに跳ね除けることもできず……。

ズルリ。

馬乗りにされ、見事にお尻を剥き出されたのであった。

『おぉー!!』

お尻が顕になると同時に、その場にいた数人から歓声が上がる。ずり下ろされた白いパンツが股の間で三角形を作ると、カイは早くも恥ずかしさに涙目になっていた。全部、見られてしまった……。

『ペンペン♪ペンペン♪』

次いでペンペンコールが起こり、勝者のバットがリクに手渡される。リクはバットを高く掲げると、しなやかに手首を返してカイのお尻に打ち下ろし――

パチーンッ!

――ズボン越しとは違う、弾けるようなお尻の音が室内に響き渡ったのであった。


2018-06-17 罰ゲーム応援バット 


パチーンッ!……パチーンッ!……パチーンッ!!

その日、それからも数回お尻の音と歓声が繰り返され、罰ゲームが一巡する頃には彼らの間に不思議な連帯感のようなものが生まれていた。銭湯に行った時など隠しもしないし、プールの着替えの時にちらりと見えてしまう時は、なんてことはないはずなのに。

部屋でお尻を出す独特の感覚。集まるみんなの視線、ヒリヒリとした軽い痛み。まだ性欲もその発散も理解してしない彼らの胸中には、恥とも屈辱とも興奮とも言えない、妙な高揚と新しい種類の興奮が燻り始めていた。

そして、彼らは集まる度に誰からともなく、こう切り出すようになったという。

「ねぇ、今日はやるの……罰ゲーム?」



おしまい


※…お仕置きとは少し毛色の違ったものを書いてみました。