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桃尻文庫

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お道具箱(母娘お灸あり)

「これからは自分で管理しなさい」

 

去年の誕生日。母にそう言って渡されたのは、私が日頃使っていた、いや、使われていたお仕置きの道具たちだった。そう、うちには今時めずらしいお仕置きの習慣がある。それも、周りと比べてかなり厳しいものばかり。

 

黄色い小ぶりな洗面器とイチヂク浣腸の大箱、お尻叩きに使っている杓文字。それからお縛り用の紐に、ミニサイズのお線香と艾の入った紙袋。そして、万が一のために敷くビニールシート。見るのも嫌なそれを、私は自分の手で保管しなければならなくなったのだ。

 

「きちんとお手入れをして、残りが少なくなったら無くなる前にちゃんと報告すること」

 

母は私にそう言い含めると、大きな空き箱に入れたそれらを託したのだった。

 


……

 

「杓文字とお浣腸を二つ持って降りてらっしゃい」

 

ある休日の夕方、お仕置きを宣告された私は青ざめた。昼間のうちに宿題を終わらせる約束を破っただけにしては、厳しい罰だったせいもある。けれど、それ以上に心臓を揺さぶったのは、件のお仕置き箱の中身のせいだった。

 

(どうしよう、浣腸が無い!)

 

前に使った時、お仕置き後の痛みと疲れで数を確かめるのをサボってしまい、ついそのまま部屋に持ち帰ってしまったのだ。後から気付きはしたものの、自分を痛めつけるための道具となると、なかなか買ってくれとは言いにくい。それも、お仕置きの中で最も恥ずかしくて嫌な浣腸となれば、なおさらだった。

 

「無くなる前に報告しなさいと、ちゃんと言っておいたでしょう」

 

私が一階のリビングに降りていき、母に恐々としながら浣腸が足りないことを伝えると、お見通しとばかりにお説教が始まった。

 

「いつ言いに来るのかなと、ずっと待っていたのよ」

 

あえてカーペットから外れたフローリングの部分で正座しながら、母のお説教を受ける。浣腸を箱から取り出して使うのは母なのだから、無くなったことは知っていた。それでもなにも教えてくれなかったのは、私に自分で責任を持って物を取り扱うことを教えるためだったという。

 

「今日はしっかり躾てあげないとね」

 

エアコンの風を受けた床の冷たさ。それがすっかり膝の体温に馴染んだ頃になって、ようやくお説教が終わり、今回の罰の内容が明かされた。

 

お尻叩き50回と、本来するはずだった浣腸の代わりのお灸、米粒大を4壮。そして、浣腸が無くなっていることを報告しなかった罰として、お尻叩きをもう20回と、夕飯までのお立たせである。

 

痺れた足で二階の自室から必要なお道具を持ってくると、母は私の泣き声が漏れないように雨戸を閉めて待っていた。

 

……

 

『ごめんなざいっ!!ごめっ、ごめんなざいっ!!』

「まだ半分も終わってませんよ、暴れるんじゃありません」

 

暴れると言っても、私は手首と足首とを一纏めに紐で結わえられているので、その場で身をよじるのが精一杯だ。

 

それでも杓文字の一撃がお尻に弾けるたび、私の頭は真っ白になって、水揚げされた魚が跳ねるようにシートの上でお尻を踊らせてしまう。

 

左右交互。お尻のほっぺたを均等に真っ赤に染められ、最初のお尻叩きを終える頃には、床と擦られた背中にもじっとりと汗をかいていた。

 

「次はお灸のお仕置きですよ」

 

50発を打ち終え、一旦、杓文字を脇に置いた母が艾を丸めてお灸の用意をしはじめた。

 

私は縛られたまま仰向けに転がされているので、母の手元は見えないが、かさかさという紙袋の音を聞きながら、少しでも小さく拠ってくれますようにと、誰にともなく祈っていた。

 

「さあ、据えますよ。あっという間だから、しっかり我慢なさいね」

 

ライターの石を擦る音が聞こえ、あたりにお線香の香りが漂うと、早くも嗚咽が漏れ出した。

 

「まずはここに据えてあげます」

 

唾で湿らせた母の指先が、私のお尻の谷間に触れた。冷やっとした感触があったのはお尻の穴より少し上、普段はお尻の肉に隠れて見えない部分だった。

 

濡らした部分に艾が置かれ、お線香の火が近づいていく。

 

私の足をしっかりと掴んでいる、母の左手の力強さ。その指の食い込みと同じくらい、私は身を固くして歯を食いしばった。

 

「あづいっ!!あづいよっ!!」

 

お線香の香りに艾の燃える煙臭さが混じったのが分かると、同時に皮膚を焼くお灸の熱も訪れた。お尻の間への違和感はすぐさま熱に変わり、数秒も経たないうちに、まるで釘でも刺されたかのような強い苦痛に変化した。

 

「いづぅぅ……!」

 

ぎゅっと身が縮むようなお灸の熱さ。米粒大のそれが熱いのはほんの一瞬だが、肌を焼かれた余韻がジクジクとお尻の間で疼いていた。

 

「次はここです」

「あいっ!」

 

ついで母の指が触れたのは、1壮目から更に1センチほど先。火傷したばかりの部分の近くを触られる痛みと恐怖で、引き攣ったような返事しかできない私のお尻を軽く叩いて、また母の左手が私の足首を力強く掴んだ。

 

……

 

「お夕飯ができるまで、そこで立ってなさいね」

「はい……」

 

表面も谷間も、満遍なく痛んで疼くお尻を出したまま、視界には涙で滲んだクロス壁が見えた。我が家ではお馴染みの光景だ。

 

お灸は3、4壮目も、それぞれ少しずつずらしながら、同じようにお尻の間に据えられた。そこまではなんとか踏ん張れた私だが、お灸と最初に受けたお尻50発の痛みが残る中での、最後のお尻20発は流石に堪えきれず、今日もビニールシートを汚してしまった。

 

お漏らしは次の日まで下着没収。だから、今日はもうお尻をしまえない。

 

お夕飯までの二時間ほどのお立たせの後。裸のまま座った食卓椅子のひんやりした木の感触が、火照ったお尻に意外に心地良かったのは記しておこうと思う。

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